磯田桂史著「明治期熊本の洋風建築史」

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熊本まちなみトラストの磯田圭史理事が、長年の研究の集大成として刊行した「明治期熊本の洋風建築史」についての伊藤理事長の書評をご紹介します。本編は是非ご購入の上お楽しみください。

書評

磯田桂史著「明治期熊本の洋風建築史」
九州大学出版会  A4 一五八ページ

伊藤重剛(熊本大学名誉教授)

初めての熊本明治建築通史

磯田桂史氏は長年熊本の明治建築を研究してきたが、このほどその成果をまとめて出版した。これにより洋風の建築が、熊本にどのように導入され発展してきたか、通史として明らかにされ、熊本の近代史研究にとっては、画期的な書物となった。

氏によると、熊本の洋風建築の導入には、ふたつの伝達経路がある。そのひとつは主に明治初期の長崎ルートで、ジェーンズ邸のように長崎で西洋人たちの邸宅を手掛けた職人たちから伝えられた。もうひとつは東京ルートで、軍の兵舎や病院、電信の建物など国の出先機関の建物として、東京の技術者から伝えられたものである。

熊本に普及した洋風建築

明治二十年頃からは、東京ルートの本格的な西洋式建築が作られ始める。熊本大学に残る第五高等学校本館(明治二十二年)、一部だけ保存された京町の熊本地方裁判所(明治四十一年)などはその例である。これら国レベルの建築はレンガ造で、これに比べ県レベルの建築は木造という違いがあったが、どちらも本格的な西洋の様式を備えた格式の高さをもっていた。

このほか本書には、県下で建てられた洋風建築が、学校、役所、鉄道、工場、病院など、機能別に分けて述べられている。

ここに述べられた建物の殆どはその本来の役割を終えもはや存在せず、本書でしかその建物の内容を知ることはできない。さらに写真とともに平面図などの図面が一緒に掲載されているのが、建築史の書物として本書を貴重なものとしている。

明治の新聞を網羅的に調査

本書の重要性のひとつは、その記述が、明治の新聞の丹念な調査に基づいていることである。本紙の前身である九州日日新聞やその他数紙を含め、明治の全ての新聞記事が調査された。これは何年もかかる地道な作業であった。

ちなみに氏はその新聞記事の内容を集めた建築関係の資料集と人物誌を、近々出版しつつあり、これもまた建築のみならず建築以外の分野にも重要なものとなるであろう。

この書評は、2022年4月3日付の熊日新聞にも掲載されました。

 

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