防災の観光化 観光の防災化
日時:2019(令和元)年12月17日(火)18:30~20:15
場所:PSオランジュリ(熊本市中唐人町)
参加者: 37人(講師のお二人を除き)
○ 開会 講座の趣旨(KMT松波広報部長)
○ 熊本まちなみトラスト(KMT)伊藤理事長ご挨拶
○ 都市計画家協会と講師の紹介(KMT冨士川事務局長)
○ 講座1:講師 土肥英生
日本都市計画家協会理事/NPO燃えない壊れないまち・すみだ支援隊
(1)墨田区の概要
- 墨田区の(夜間)人口は27万人、荒川を挟んで隣接する葛飾区を合わせると73万人
熊本市の1/8の面積に同じくらいの人口が居住している。 - 被災の記憶―100年間に2回―: 1) 関東大震災(1923)本所被服廠跡地への避難者が火旋風の発生などで、3万8千人焼死 2) 第二次世界大戦の空襲(1945)によって、6万人超の死傷者と30万人近い罹災者
- 水戸街道(国道6号)と明治通りに囲まれた曳船駅周辺は、住工混在の木造密集市街地・・・燃えやすく壊れやすい
- 不燃化促進事業等による延焼遮断帯形成と耐震改修等による燃えない壊れないまちづくりを推進している
(2)燃えない壊れないまち・すみだ支援隊の取組み
- 区長諮問組織として会議体の発足=専門家が多く参加する「円卓会議」
- 東向二四地区まちづくりを考える会(都市防災と福祉施策の連携を目指す)
- 大学生・大学院生協力による防災マップづくり(芝浦工大中村仁研究室)
- ※8つの構成団体ですみだ燃えない壊れないまちづくり会議を結成、検討を重ね
「寄合い処(ふじのきさん家)」を整備
篤志家(企業)による場所(建物)の提供/部材メーカーの協力/早稲田大学長谷見研究室と東京大学生産技術研究所加藤孝明研究室の協力 - ふじのきさん家における活動 ・・・(配布冊子) 「ふじのきBOOK」参照
2013年4月スタート →ふじのきカフェ、高齢者のふれあい・交流、防災講座・防災遠足
ふじのき音楽倶楽部、手仕事地域交流・・・
(3)新たな防災文化の創造に向けて
- 都市計画は未来からの逆算ができるが、防災は(いつ起きるかわからない災害への対応なので)未来からの逆算が出来ない
- だから、日常生活の中で「防災文化」をつむいでいく必要がある
- 具体的には、学生ボランティアグループによる「防災遠足」や「防災観光ふろしき~なまずふろしき~」の商品開発
- 「コミュニティ活動」、「防災活動」、「ものづくり活動」がすみだの巣づくりの3本柱
○ 講座2:講師 大鋸幸絵
NPO燃えない壊れないまち・すみだ支援隊/防災観光ふろしきプロジェクト発起人
観光ふろしき の紹介
- 日常に防災意識を浸透させるためにマップに街の名所を取り入れた
特に、避難する方向の目印になるような箇所を図示した - 避難場所については、「一時(いっとき)集合場所」も加えた
- 防災ふろしきを使って小学校でイベントを開催
- 「防災」というと負をなるべく小さくするための「義務感」のイメージが強いが、「文化」という観点から捉えなおすことで日常的な活動の一部にすることが出来る
- 防災観光ふろしきは、地域の防災を「文化」として捉える試みの一つとして位置づけたい
○ 参加者との意見交換 (Q.参加者の質問/A.講師の回答)
Q.観光防災ふろしきについて、できた経緯についてお尋ねしたい。また、これは真似をしていいのかということも。
A.火災の延焼モデルの研究をしていた芝浦工大の研究室の学生たちが「防災マップ」を作成しアンケート調査でマップの目的を確認したり、円卓会議でも検討してもらったりした。
自分自身がプロダクトデザインを専門にしていて水着の開発にも携わった経験があり、撥水性があり水をためることが出来、強く押すとシャワーのように水を通すことの出来る素材を採用した。
東京都も作ってしまったので、真似をするのはかまわないと思う。
Q.スポンサーはどれくらい集まったらできそうですか?
A.1社5万円でお願いしたが、別に朝日新聞等からの種銭が500万円ほどあった。
Q.手拭やエコバック(買物袋)など他の用途もあると思うが?
A.手拭はいいですな。
Q.「防災」は字ズラが硬いので何か別の言葉はないのか?
A.そう思うが、行政には刺さる言葉なので敢えて使った。一般の人には、「防災観光って何?」と興味をもってもらうことを狙った。北斎のなまずの絵も取り入れており「なまずふろしき」という別の呼び方もしている。
Q.「防災食はまずい!」は先入観であって、最近自分の自治会の防災訓練で防災食は完食された。まずい!の先入観を払拭する方法は?
A.回を重ねると親しみをもってもらえる。アルファ米もカレーにしたり工夫を重ねる。
Q.(意見)「防災」をもっとくだけた、ユーザーフレンドリーなこととして広めたい。
○ 講師からのまとめの一言(大鋸)
昔からやられてきたコミュニティ活動が不活発になってきているが、「防災」は最後の砦なのではないかと思う。「防災」を支点にして作用点である福祉や子育てなどの諸活動を活発にしていければと思う。
○ 講師からのまとめの一言(土肥)
河川氾濫に対して大阪市では防災計画の中で、付近住民の一時避難の受け入れができるマンションを公開している。若者の間でのリノベーションが盛んになっているが、専門家を派遣し地震に対する構造補強の方法を提案する動きもある。
過去にどんな災害が起きたのかという人の記憶を継承することも重要。人の記憶と場所をどのようにつないでいくのかということは「まちづくり」の大きな役割りだと思う。
○(司会)結びと第3回出前講座のご案内
=了=