設立25周年記念講演会

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講演の記録動画(5本)     

2022(令和4)年11月25日
19:00~20:30/早川倉庫

《あいさつ》

伊藤重剛
(NPO法人熊本まちなみトラスト(KMT)理事長)

熊本のまちづくりの井戸を掘った人たちの話をちゃんと記録に残しておきたい。この講演もその一つと思っています。

《講演》

冨士川事務局長

冨士川一裕(KMT事務局長)

10月から自宅でカフェを開業し余生を送ることになりました。そのタイミングでそのカフェの2階にあるKMT事務局にあるたくさんの資料を繰りながらその歩みを振り返ることにしました。熊本のまちづくりの中でのまちなみトラストの位置づけについても最後にお話できたらと思います。

1.熊本まちなみトラスト25年の歩み

設立後最初の10年間は、取壊し寸前の歴史的建造物の保存と活用に明け暮れました。次々と案件は持ち上がり休む暇はありませんでした。思い返しますと、残すという「不可能」への挑戦でしたので、うまくいくことは稀でしたが、一部保存も含め何らかの保存・活用が達成された時の喜びはひとしおでした。

KMTの活動はボランティア(自主的な自由意志で集まる個人)のグループ・アクションでしたので、いわば『お祭り』のあとの打上げのようなものでした。ただ、『お祭り』にはルールやしきたりがあって、一定の路線に沿って執り行われますが、KMTの活動は個別プロジェクトごとの一品生産でしたので試行錯誤の繰り返しでした。振り返ってみますと「予期せぬ出会いをモノにした」時に「不可能」が可能になりました。

次の10年間は熊本の城下町『新町古町』をフィールドにした活動がメインでした。2011年の新幹線開通を前に県や市も熊本駅と熊本城の間にある『新町古町』の活性化に注力され、このエリアの町屋調査と地域住民のワークショップに予算がつきました。この時期KMTには町屋をはじめ新町古町の歴史資源と地域の人たちの情報がストックされていきました。町屋再生のリノベーション事業をはじめ空家になった町屋を使ったイベントや町屋巡り、ライトアップ等の様々な事業に取り組みました。

そのような新町古町地区にある歴史的建造物が平成28年熊本地震で激しく被災し、KMTはNPO法人化して復旧復興に力を尽くしました。その活動が25年の歩みの最後の5年間です。
(以上の詳細は別途の記念出版の第2章に譲る)

2.熊本の(中心市街地の)まちづくり

熊本の街なか(中心市街地)のまちづくりを20年ごとに3期に分けて紹介します。1965〜1984年の第1期は2つの百貨店と上通・下通・新市街という商業地の骨格ができた時期で市民会館(68)、交通センター(69)、新市庁舎(81)もこの頃にできています。

次の20年(1985〜2004)は大型店とロードサイド店で郊外の商業集積が高まり中心商店街の脅威となりました。これに対して上通商栄会は「コミュニティ・マート構想(商店街は暮らしの広場)」を策定し並木坂の整備とアーケードの掛け替えを実施、派生的に上乃裏に古民家リノベーションによるセレクトショップが増えていきました。栄通り、銀杏通りをはじめとする飲食街の歩行者モールの整備も進みました。流通団地(87)、フードパル(97)、グランメッセ(98)など中心部では実現できない都市機能が強化されるとともに、熊本駅北地区再開発(92)、上通A地区再開発(02)、手取本町地区再開発(02)などによって中心市街地での都市機能も強化されました。

2005年から現在までの概ね20年は、東日本大震災(11)、熊本地震(16)、人吉・球磨豪雨災害(20)に加えてコロナ禍(20~)が重なり災害と向き合う時期です。また同時に、新幹線の熊本への乗り入れ(11)、政令指定都市への移行(12)、COCOSA開業(17)、熊本駅新駅舎の開業(19)、サクラマチクマモト開業(19)、アミュプラザの開業(21)など熊本市中心市街地のまちづくりにインパクトを与えるプロジェクトが実現しています。

近年の中心市街地のまちづくりは「中心市街地活性化基本計画」がロードマップ(進行管理)の役割りを果たしています。同基本計画は5年ごとに更新されますが、2007年からの第1期が始まった時期がちょうど新町古町のまちづくりが盛んになったころで、40年前には衰退地区としてお荷物扱いされていた同地区も、城下町の風情を残す地区として中心市街地活性化を担う枢要な地区として位置づけられるようになりました。

3.熊本まちなみトラストの位置づけ

新町古町地区が中心市街地を構成する4つの地区として位置づけられたことにともなって熊本まちなみトラストも「まちづくり団体」として中心市街地活性化協議会の委員になっています。

さらに2020年6月に熊本市の『歴史まちづくり計画』が国の認定を受けた後、NPO法人熊本まちなみトラストは、同計画を推進する民間組織として法定の支援法人に指定されました。

《質疑応答・意見交換》

Q1.

新潟県で歴史を活かしたまちづくりに取組んでいますが、住民の関心がなかなか高まりません。よい方法がありませんか?

A1.

新町ではPTAのお父さんお母さんが子どもたちのために地域の歴史を教えようとまち歩きやマップづくり、シンポジウムを開催したりすることがまちづくりのきっかけになりました。古町では2011年の東日本大震災のあと移住してきた人たちと同世代の若い人がコラボしてイベントをやったりして、定着して現在に至っています。

Q2.

冨士川さんのパッションの源は何ですか?

A2.

一言で言えば『意地』です。若い頃から権威のある先生方と向こう見ずにも口論して、建築(家)だけでは街はよくならない。私は直接都市にかかわるような仕事に就きます。と宣言したり、先生たちの価値基準で捕らえた文化財のヒエラルキーは一面的過ぎる。もっと多層に、裾野広く文化財をとらえるべきではないでしょうか。と息巻いた。今振り返ると冷や汗ものですが、真っ正直な私の意見に先生方も耳を傾けていただきました。先生方にはお詫びと感謝しかありませんが、若い頃の真剣な思いは私のハートに今も消えることなく残っていて、それを一言で言えば『意地』と言ったわけです。

(了)

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