期 日:2021年7月26日(月)18時30分~
場 所:くまもと県民交流館パレア会議室9(文林堂地下ホールから変更)
講 師:熊本県教育庁文化課文化財活用班 能登原孝道参事
出席者:14人(KMT理事、会員・・・黒瀬さん、カリーノ・辻さんも)
記 録:竹田宏司
熊本県教育庁文化課で熊本県文化財保存活用大綱を担当しておられる能登原孝道さんに、「熊本県文化財保存活用大綱について」と題し、大綱の章立てに沿ってわかりやすくお話いただいた。(詳細は当日のPPT資料参照)
大綱の位置付け等(第1章)
・大綱策定の経緯と目的等
従来、指定の種別ごとに個別に護るという体制
➡ 点と点だったのを面として保存活用しようというもの。
未指定文化財も対象に~策定委員会でも議論、定義が曖昧という批判もある。
・大綱の運用・対象期間
大綱策定の背景と熊本県における文化財保護行政の現状(第2章)
・社会的背景
少子化の進行~維持できなくなってきている
文化財への期待の高まり~観光への活用・日本遺産制度など
・文化財保護行政の現状
文化財専門職員の不足~配置市町村32/45
埋蔵文化財以外の専門職が少ない~9割が考古学
指定文化財の所在不明や解除の要望なども
➡ 刀剣などは売却により所在が辿れなくなる。
災害時にレスキューに行ってそんなモノはないと言われた。
➡ 世代が代わるとわからなくなる。
文化財保管施設の不足~県立博物館や公文書館がない。
文化財の保存・活用に関する基本的な方針(第3章)
・基本的な方針 「文化財を次世代につなぐ」
・文化財をまもる、文化財を活かす、文化財を伝える、人・組織を育てる
文化財の保存・活用を図るために講ずる措置 (第4章)
・県が取り組むこと
文化財をまもる→文化財に関する悉皆調査など
文化財を活かす→デジタル技術の活用推進など
文化財を伝える
人・組織を育てる
県内の市町村への支援の方針 (第5章)
文化財をまもる
文化財を活かす
文化財を伝える
人・組織を育てる
防災及び災害発生時の対応 (第6章)
平時における災害への備え→災害発生時の対応→復旧記の対応
平成 28 年熊本地震及び令和 2 年 7 月豪雨における対応
「熊本県文化財防災マニュアル」
文化財の保存・活用の推進体制(第7章)
文化財の保存活用の推進体制・文化財保存活用大綱の運営体制
文化財保存活用地域計画について
県が策定する文化財保存活用大綱を踏まえて市町村が策定
今後熊本市などでも策定される
文化財保存活用支援団体について
市町村が保存活用の主体となるNPO等の民間団体とパートナーシップを結ぶ
文化財保護法第192条に基づく文化財活用支援団体の指定は全国で一例のみ
お話の後、質疑と意見交換を行った。
鄭)
文化財保存活用地域計画と歴史文化基本構想、歴史まちづくり法の歴史的風致維持向上計画との関係は。
能登原)
歴史文化基本構想は平成20年から策定が始められた制度。文化財保存活用地域計画と同じ考え方に基づくものだが文化財保護法に位置付けられていなかった。県内では八代、人吉、多良木、湯前の4市町が策定済。両者の内容は若干違うが、歴史文化基本構想に少し手を入れれば文化財保存活用地域計画になる。
歴史的風致維持向上計画との違いは、文化財保存活用地域計画のほうが市町村全体を対象としており範囲が広い。歴史的風致維持向上計画は重点地区が絞られている。
古川)
郷土文化財制度との関係は。
能登原)
郷土文化財制度は活用に重点を置く制度。指定と未指定の間に位置する。
古川)
二重になってわかりにくい。
竹田)
郷土文化財制度は熊本市独自のもの。太宰府市が早くから取り組んできた市民遺産制度をモデルにしているのではないか。この会に市から来てもらって話を聞く機会をもってもよい。
古川)
未指定を誰が認定するのか。
能登原)
指定されていない文化財で価値があるものについてはその価値を明らかにしたうえで指定するのが一番良い。
竹田)
未指定は価値が明らかになっていないものと、価値が指定の基準に達しないものがある。それでも大事に思う市民がいるなら、支援できる郷土文化財制度のような制度があるのが良い。
冨士川)
大綱の全国的な傾向は。
能登原)
47都道府県のうち41が策定済み。残り6も進めている。地域計画は昨年度時点で20数件策定済、策定中が130件ほど。県内は0。熊本県の大綱策定が3月だったのでこれから県内市町村でも地域計画策定の動きが出てくる見込み。
豊永)
地域計画の位置付け。文化庁が認定するのか。県は。策定する、しないは効果が違うのか。やることの意味は。補助金が来るのか。
能登原)
県を通して文化庁に認定を申請。県も協議会のメンバーとして策定に参加。補助金は策定することで対象になったり加算されたりする。そのため計画を策定しているところに補助金がさらに来るようになることが想定される。
鄭)
まちなみや風景は対象になるのか。
能登原)
まちなみは重要伝統的建造物群保存地区が該当するが県内にはない。風景の場合は、水前寺成趣園などの名勝と、農業景観などの文化的景観が対象になる。
鄭)
未指定のまちなみは対象にならないということか。
黒瀬)
文化財がお金を生み出すことが大事ではないか。奈良では文化財の刑務所がホテルとして活用される話があったが、県内では具体例はあるのか。
能登原)
経済的自立といえば、熊本城など可能性はあるが大多数はそうではない。個々の文化財について活性化のための計画を策定することになる。
黒瀬)
地域全体を活性化するということになるとどうか。
能登原)
地域計画の中で検討していくことが一つの方法と考えられる。
冨士川)
登録文化財の捉え方。登録文化財が集積したら、重要伝統的建造物群保存地区に相当する・・・関連文化財として捉えることができるのではないか。熊本地震からの復興で登録文化財が増えると、熊本市はチャンスではないか。
能登原)
そのとおり。
松波)
抽象的な話になるが、外資やナショナルブランドが入ってきて、でかいビルを建てたりする。認知していないとそういうことになる。外から資本が入ってきて荒らされることもある。産業界を無視するとそういうことになる。それから学との連携による発信や支援。それを盛り込むと大綱としてバランスが良くなるのではないか。
能登原)
連携が大事。文化財保護法には限界がある。指定や登録はその対象となるもののみ。
鄭)
それは日本の限界。
能登原)
景観法などでの対応になる。
松波)
大綱に盛り込んであるとやりやすい。地元だけでなく産業界に行き渡らせないと。
能登原)
それも大事。
冨士川)
熊本まちなみトラストができること。PSとカリーノの社長が話す場を設けることができた。回り道かもしれないが、産業界の対話は大事なことではないか。
(参考)
この大綱の素案が発表された時、熊本まちなみトラストでは内容を検討の上、募集されたパブリックコメントに意見書を提出しました。その内容と県の対応を下記のリンクからご覧ください。
「熊本県文化財保存活用大綱(素案)」についての意見
熊本県文化財保存活用大綱(素案)パブリックコメントへの対応
- 次回は9月19日(日曜日)に川尻公会堂などを会場に、総会の際に行うはずだった内容で実施するよう地元と調整。
その次は熊本市の担当課から郷土文化財制度について話をしてもらうことを検討。