□ 日 時 2018年5月28日(月)18:30~20:30
□ 場 所 熊本大学まちなか工房
□ 参加者 理事7人(委任出席を含まず)、会員3人、事務局職員1人 計11人
委任状出席=8(理事25人中出席15人) *平山禎久さんも
審議・報告
【議決事項】
なし
【報告事項】
1.総会の振り返り(冨士川事務局長)
①総会出席者について
②総会後のPS交流会について
③関連した展示イベントについて
2.フリーマン財団会長来熊ご案内と懇談について(事務局長/松波理事)
①on the 明八橋 ・・・ マルシェの提案を受けた
②住友旧支店に興味を持たれたのでご案内した
3.登録文化財について(話題提供:事務局長)
(1)Family Historyと登録文化財(PSオランジュリの場合)
- PSは、企業コンセプトに照らしてオランジュリを継承する意志を明確にお持ちである。企業コンセプト=屋内気候の専門家→時を越えて心地よい空間を提供→熊本に根付いた(時を越えて文化的価値を持つ)建築空間のなかで心地よい空間を保ち続ける・・・震災復興にあたりこのような考えがよりいっそう明確になった。
- PSオランジュリィの保存活用は、親(現会長)から子(現社長)へと受け継がれるプロジェクト。5/19交流会での社長説明。
- PSという企業のFamily HistoryのなかでPSオランジュリ(登録文化財)が位置づけられている。
(2)家族の文化財と街の文化財
- PSと同じような考えを持つ未指定文化財が街の中に複数ある場合、それが集合して「街の文化財」とする手段として「文化財の登録制度」は有効である(1997.9.16後藤治氏の熊日投稿記事(P11))
- 熊本地震の後、被災文化遺産所有者等連絡協議会を設立した意図もここにあった。
- 家族の文化財が街の文化財として支えあう関係があれば、残そうという家族の意志も強くなる。やむなく「解体」されたケースでも支えあう仕組みが強固であれば解体を回避できたかもしれない、という思いがある。また「うち1軒が残っても訴求効果は薄い」という意見は関係者の間でしばしばお聞きした。
- 指定文化財とは異なり、登録文化財制度による文化の継承は個々の家族の文化財(愛着の根拠と言っていいのかもしれない)の積み上げが必要であり、今後のヘリテージマネージャーの活動や歴史的風致維持向上計画の立案に当たっては、留意すべきと考えられる。
4.ヘリテージマネージャーのあり方(討論)
(1)2011年熊本県ヘリテージマネージャー養成講座発足時の意識
- 発足時、県下各地で登録文化財を増やすことを活動目標にしよう、そのためには登録のための所見を書けるようにしよう、ということで盛り上がった。
- 熊本地震の後、ヘリテージマネージャーは文化財ドクターとして、被災調査に従事した。
- 所有者には文化財アレルギーがもともとあるので、1)指定文化財との違いを十分説明することと、2)被災文化財所有者の身になって寄り添いながら相談に乗る必要があることを痛感した。
- アートポリス運動の場合にも似たようなアレルギー反応があった。
(2)ヘリテージマネージャー活動はボランティアか
- 建築士は設計で報酬を得ている。ボランティアで修復設計をすることには無理がある。ボランティアから脱却しないと活動が維持できないのではないか。
- 登録文化財を増やすことを社会的使命として、登録文化財への申請作業はボランティアでやるべし、という意見がヘリテージマネージャー内部にはあった。
- 熊本の場合、ヘリマネの位置づけがまだ定まっていないようだが、建築士が設計監理業務として、職能集団として取り組むことが望ましい。
- 設計士に依頼することのハードルも高く、まして、文化財の修復として設計を依頼することへの(ユーザー側からの)ハードルは高い。
- 地域の文化遺産を残すという公的側面から設計費の1/2補助が制度としてはあるのだろうが、工事費の補助は0であることも、ハ-ドルを高くしている。
- 工事費補助=0でもやる、という裏には所有者の建物への愛着や思い(家族の文化財意識)が醸成されていることが前提にある。醸成支援に対する支援(調査費補助)も制度としてあっていい。
- 現行の登録文化財制度では建物の固定資産税減免措置はあるが、土地にまで対象を広げられたらだいぶ違うのだが(相続税に関し、土地を含む評価額を10分の3控除される、という優遇措置はある)。
(3)文化財修復主任技術者(制度)との違い
- 指定文化財の修復設計をヘリテージマネージャーができるようにしてウォーミングアップ(文化財が扱える建築士)できないか。
- 指定文化財の修復設計は保存修復を目的としていていることから、設計者には文化財修復主任技術者の資格が要求される。登録文化財の場合は、指導助言者がいれば通常の設計者でもよいということになっている。
- これに対して登録文化財は現代的な用途として使い続けることに目的があり、そこに建築士としての設計活動の延長としてヘリテージマネージャー活動を行う意味(尊さ)がある。ユーザーのほうは、使いながら家族の文化財を大切にする、という意味(尊さ)がある。
- 登録文化財の設計は、文化財修復主任技術者の指導を受けて設計を進める、という体制が整うことが望まれる。
(4)文化財行政の実態
- 建築士制度は建築行政と連携して社会制度として完成しているが、文化財設計者(ヘリテージマネージャー)に対応した文化財行政は全く未完成だ。
- 熊本市の文化振興課ですら近年やっと文化財の担当に建築系の専門職が配置されたくらいで、他の市町村は皆無である。
- ヘリテージマネージャーの養成とともに、行政サイドの体制も充実させることが必要。
- 今回の文化財保護法の改正では「地域計画」を定めて市町村独自の判断で歴史的環境の保存と活用を図ることができるようになったが、それも人材育成が必要。
- 伝建地区のある都道府県では市町村職員と民間設計者の連携も生まれているが、熊本は伝建地区のないレアー県(山形・東京・神奈川・熊本)なのでその点でも立ち遅れている。
5.PSオランジュリこぼれ話(平山禎久さん)
①父(現会長)は、ヨーロッパの建築設備会社と技術提携しながら屋内空間の心地よさに対する一貫した思いがあった。
②そんななか、あるスエーデン人の日本文化研究者と知り合った。川端康成がノーベル文学賞をとった時の審査委員でもあった人でOlof Lidin氏という。
③その人と種子島の調査に行った帰り道にたまたま熊本に寄って、熊大の位寄先生とお会いし旧第一銀行建物のことを知り、これに遭遇した。
6.清永本店募金のこと(話題提供:竹田副理事長)
①「一口1万円は高額すぎる」という意見が寄せられた。
②もっと小口の寄附もあってもいいのではないか。
③先行理事会で議論したときには、第一弾として清永本店の修復費用の募金活動を始めるが、第2弾で新町古町全体の文化財保存のために必要な費用やそれを促進するトラストの活動費補助の募金を始める。その際には低額補助も受け入れるが、清永本店は個人資産に対する緊急支援(特殊例)ということで、ある程度余裕のある方から浄財を集めることにしたのでこのようなカタチになった。
④Youtube動画が100回くらいしか見られていないのはアップ時のタイトルが関心や共感を呼ぶ言葉になっておらず、役所言葉的だからなのではないかとの意見。
⑤アーカイブ動画についてはホームページのサイト内にあるに動画にもっぱらアクセスされている。
⑥貴重なご助言には真摯に耳を傾けよう。助言(批判)も支援だ。
7.その他
(1)玉名・旧高瀬藩武家屋敷(話題提供:竹田副理事長)
- 以前トラストでやった「町屋体験の日」を参照しながら清掃活動を始めた(新聞記事)。
- 所有者が遠隔地居住のため、家族の歴史として伝承するのに厳しい面がある。
- ファミリーヒストリーを柔軟に幅広くとらえることも必要。例えば、先日あった一新まちづくりの会の総会では、武蔵と雲林院弥四郎(うじいやしろう)の伝説の対決の話がごく自然に語られていた。(専門家でなく)地域の人の人口に膾炙することで、ファミリーヒストリーがつむぎ出される。
- 玉名市は平成4年に文化財保存計画協会に委託して文化財保存整備計画を策定しているが、活かされていない。
- 伝建については、高瀬について平成10年頃に県に相談したようだが、該当しないということで沙汰止みになったときいている。
(2)国土交通省空き家対策総合支援事業(話題提供:豊永理事)
- 1)人材育成と相談体制 2)発生抑制・除却・利活用モデル事業 の2つの柱。
- 建築士(会)による適正な管理方式の検討に入った
- 「建築物は地域のブランド」であるというヘリマネの対象とは異なる分野だが、共通する視点も多い。
次回例会/理事会 予定
2018(平成30)年6月25日(月)18:30~20:00(なるべく20:00に終わる)
於:熊本大学まちなか工房